今日から昨日へ
京子ちゃんから携帯をゆっくりと取り返し。
「京子ちゃんだっておんなじでしょうが…」
京子ちゃんの彼氏のケンちゃんも優ちゃんと同じタイプの人間。
…でも浮気性じゃないぶんマシ。

いつの間にか私の肩にもたれて眠ってしまった京子ちゃんをそっと残し車を降りる。

昼間の暑さが嘘のように冷え込む朝方、ふらつく足取りで階段を昇り鍵を開ける。

「ただいま…」

誰も居ない。まあ…何時ものことなんだけどね…。

「はぁ~…」

優ちゃんと付き合い出してからため息が増えた。
ため息をつくと幸せが逃げるらしいけど、だったら優ちゃんと付き合うまで私は幸せだったんだろうか?…


親は私が小さいとき離婚していて父親の記憶は無い。
母親は一人親だから、って後ろ指さされたくない。って必死で私を高校まで育ててくれた。
厳しかったけどいい母親だった…
あの日までは…。

母親は私が高2の時担任の先生と駆け落ちした。

私には置き手紙1つなく、二人が電車に一緒に乗ったのを見たって人が居なかったら駆け落ちだなんて誰も気づかなかっただろう。

私は高校を続けられる訳なく中退、あれから母親とは一度も会っていない。

聞きたいことは山程あるし、また会いたいとは思ってるけど母親のことは恨んでいません。

でもこんなにも私が人に執着するのもあの日捨てられる怖さを知ったからだと思う…。


高校を辞めてすぐ始めたカラオケ屋のバイト。
そこで優ちゃんと出会った。私より2つ歳上の二十歳。
明るく人懐っこい性格の優ちゃんは、いつも沢山の友達と一緒に週末になると店に顔を出した。

何回かすると顔見知りになり、私達はお互いのことを話すようになった。
同じ様に片親で育ったことを知ってからは急速に仲良くなり自然と付き合うようになった。

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