今日から昨日へ
「あ…っぅ…」

頭がガンガンと痛む…。
昨夜飲み過ぎたみたいだ…。

カーテンの隙間からジリジリとした真夏の太陽が容赦なく射し込んでいる。

もぅ12時かぁ…。

「酒…くさい」

背中の優ちゃんからお酒の匂いと微かな香水の香りがする。

またどっかのキャバクラか…。

まっったく…。

またどっかのキャバクラか…。

まっったく…。

もう怒る気にもならない。

起き上がろうとした私の手を優ちゃんが取る。

「紗~南~ちゃん」

私の身体はフワリと優ちゃんの腕に収まる。
優ちゃんの髪は明るい栗色、動く度にサラサラ流れる。くりくりとした愛らしい丸い目、唇はぽってりとしてセクシー。

文句なしにイイ男。
そう…文句なしに‘見た目’はイイ男

「今日休みだからどっか行こっか?」

優ちゃんは話しながら私の髪を撫でる。

「どっかって?」

私の髪に鼻を寄せ小さな声で

「パチスロ…」

いつもどおり。



音の波を抜け店内に入ると。
平日のパチンコ屋は思ってたよりも込み合っていて、この中の殆どの人はお金を回収されてんだと思うと馬鹿らしくなった。


いつもどおり台選びは優ちゃん、資金は私。
お金はじゃらじゃらとコインに変わり、機械に吸い込まれる。優ちゃんは自分の稼いだお金でもこんなに湯水のように使えるんだろうか?

2万円程使い優ちゃんの台が起動にのりかけたとき。

「優介さん」

と声を掛けられ振り向くと二人組の男

「彼女スか?」

日に焼けた肌に白い歯が眩しい男と

「紹介してくださいょ」

坊主頭のゴツい男。首筋の派手なネックレスが鬱陶しい。

「紗南ちゃん。可愛いだろ?」

優ちゃんが得意気に私を紹介する。
優ちゃんは私の自慢をするのが好きだ。

でも褒められるのは正直いって悪い気はしない。

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