今日から昨日へ
その日約束通り店長に寿司を奢ってもらい。
望ちゃんも誘ったけど疲れたからと断られ、結局京子ちゃんと2人でご馳走になった帰り道。



私達が歩くのと反対のアーケードから聞きなれた声がする。


「も~1軒行くぞ~!」

優ちゃんだ…。

キャアキャアと楽しそうな女の子の声もする。



「ちょ!?何やってんだろっ…行こっ!!」


怒った京子ちゃんが私の手を取り道路を渡ろうとする。


「…ぃぃ。帰ろ、多分優ちゃん仕事だから…」

京子ちゃんの手を引き戻す。

「はぁ!?何言ってんの!!スカウトなんかこんな夜中やんないし、だいちどー見ても飲んでンじゃん?」


優ちゃんの仕事はスカウト。
街中で女の子をつかまえてキャバクラやクラブに紹介して手数料を貰っている。


「いいから…帰ろ!」

タクシーを捕まえてなんとか京子ちゃんを押し込み自分も乗り込んだ。


「なんでいっつもそうなの?目を瞑って見ないフリ。現実をみなよ?いいように使われてるだけなんだよ!」


タクシーの中でも京子ちゃんは吠え続ける。
無理もない…


「京子ちゃんには関係ないから…」

「本っ当っっ。バッカじゃないの!?」

それだけ言うと京子ちゃんは不機嫌そうにタバコに火をつけもう話さなくなった。


ぼんやりと眺める窓からはいつもより沢山の星が見える。

バッカじゃない。ではなく私は正真正銘バカな臆病者…


「…ごめんね?」

タクシーを降り際に私は謝ってみたけど京子ちゃんは何も言わなかった。




部屋に戻り私は泥のように眠りに付いた。


眠りの中で思う。

もう目覚めなくてもいいかなって…


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