今日から昨日へ
過去のワタシへ②
ねぇ。
与えることでしか自分を保てなかった私達は
いつも空っぽで
虚しかったね?
でもね、本当の愛は
与えても、与えても溢れてきて溺れちゃうくらいおっきくて
優しかったよ。
その日、私は久し振りに夢を見た。
夢の中には出会ったばかりの頃の優ちゃん。
今とあんまり性格はかわらないけど、
優ちゃんの作ったフカフカのケーキの様に膨らんだ夢と
甘い香りに包まれてキラキラしていた。
また会いたい…あの頃の優ちゃんに…。
「夢…」
鼻を擽る甘い匂いで目が覚める。
優ちゃんは、もうケーキ屋はやんねぇ。
って言ってるけど私のご機嫌とりは手作りケーキって決まってる。
「ふぁ~…起きた?…ふあ~」
徹夜で作ってたらしくアクビが止まらない。
「京子ちゃんでしょ?」
私がクスクス笑うと。
「いや~すんごい剣幕だったよ…怖いのなんの…」
優ちゃんは目を丸くしながら。
「あんなのと付き合う人の気がしれね~」
ぶつぶつ言いながら手元は一切狂っていない。
クリームは、波形に綺麗にデコレーションされ上にはたっぷりの苺。
出会ったばかりの優ちゃんはパティシェの修行中でケーキ屋さんで働いていて。
腕は良く、将来は自分の店を持つんだってのが口癖だった。
でもある日、優ちゃんは店を辞めた。
優ちゃんはオーナーと喧嘩したって。言ってたけど後から人から聞いた話では。
優ちゃんのアイデアをオーナーに盗まれ、非難したら喧嘩になってクビにされたって。
酷い話。
すっかり嫌気がさしたのか今じゃこんなだけど。
それでも、今でも、こんだけ立派なケーキが作れるのに。
そう思うと涙が出た。
「ふぁ~ぁ…私もアクビうつった。食べる前に顔洗ってくるね?」
バシャバシャと勢いよく顔を洗いながら。
「1番大っきいのちょうだい」