咲くやこの花、誠の旗に
言い切ると咲耶は突然立ち上がり、勢いよく押入れを開いた。
夕飯の後、『布団は押入れに入っているから』と近藤に言われたのを思い出したのだ。
押入れの中に重ねられた布団を見つけ、咲耶はそれを一式持ち上げた。
突然の行動に平助は驚く。
「よいしょっ…」
「……何やってんの?」
「わ、私今日はもう寝ることにする。
……よし」
部屋の端の方に布団を敷いた咲耶は結っていた髪を解いて布団の中に入り込んだ。
「あ、おい!話はまだ終わって……」
「おやすみなさい!」
平助に向けられた背中が、"これ以上何も聞くな"と語っていた。
(もし私が未来のことを話してうっかり歴史を変えでもしたらきっと大変なことになる。
…って、タイムスリップ物の小説で主人公も言ってた気がするし…。
根拠はないけど、もしものことを考えて迂闊に未来のことは話さないようにしよう)
そんなことを考えているうちに今日一日で溜まった疲れもあってか咲耶の瞼は徐々に閉じていく。
(今日起きたことは全部、夢でありますように………)
そう心で願いながら、咲耶は眠りについた。