咲くやこの花、誠の旗に
「おい平助近所迷惑だぞ。急に大声上げてどうしたんだよ」
左之助が言った。
平助は少し考えてから、
「えーっと……そ、そいつ女っぽい顔してること結構気にしてるんだよ。自分は正真正銘"男"なのに舐めて見られるのが嫌だって…」
"男"という部分を強調して、咲耶は男だと念を押すようにそれらしい言葉を並べた。
それを聞いた宗次郎は寝ている咲耶に向けて申し訳なさそうに言う。
「そうなんだ、ごめんなさい咲耶さん」
分かればいいんだ、と頷く平助。
すると宗次郎はスッと立ち上がって押入れから布団を取り出し、寝床を取りはじめる。
その様子を見た平助が慌ててそれを止めた。
「ちょ、ちょっと待てお前なんでそいつの隣で寝ようとしてんだよ」
「え?なんでって言われても…、私いつもここで寝てるじゃない」
平助は言葉に詰まる。
確かに、今咲耶が寝ているちょうど隣の場所が、宗次郎の定位置だったのだ。
(そうは言ってもこいつは女だぞ…
年頃の女が男と隣同士で寝るなんて、どうなんだよ……)
口ごもる平助を宗次郎は"ははーん"と勘繰るようににやりと笑った。
「さては平助、咲耶さんの隣に寝たいんでしょう」
「そ、そうは言ってないだろ!!」
「申し訳ないけど寝るのはここって決まってるから譲れないな〜。
心配しないで、いくら咲耶さんが可愛いからって私は衆道には興味ないし襲ったりしないよ」