私は貴方に、叶わない恋をした。【続編】
「よっと…」
真奈の足音が聞こえなくなったと思ったら、身体が宙に浮いた。
「先生っ…」
ビックリして、沢先生の首にしがみついた。
「楽にしてていいから。けど、首にしがみついた腕だけは離さないで」
お姫様抱っこで、廊下を歩き出した沢先生。
ドキン、ドキン。
沢先生の顔が近い。
顔を上げられず、俯く。
「…なんか、懐かしいな」
ぼそっと思い出したかのように、沢先生が言った。
「え?」
「入学式の時も、永井をこうやって保健室まで運んだなって思って」
「!」
…私が、沢先生に恋したきっかけ。
保健室に向かうまでの廊下は、授業に使う教室が少ないためか生徒はいない。
「あれから、もうすぐで1年になるのかー…」
静かなため、小さな声で喋る沢先生の声もよく聞こえる。
「…」
好きになったのは、春。
好きで、好きで、苦しかった夏。
想いを伝えて、受け止めてもらってもその苦しさから解放されることはなかった。
そんな時に、出会ったのはー…
「…加藤」
「!?」
自分の考えていたことが、口に出てしまっていたんだと思ったぐらいのタイミングで、沢先生がヤスの名前を呼んだ。