私は貴方に、叶わない恋をした。【続編】



顔を上げるとヤスは、部屋の窓の外を見ていた。




「永井が夏休みに補講受けてる時に、沢先生に告白しているのを何回か聞いたんだ」


「え…」


ヤスは、遠くを見るように喋る。


「夏休み中だったけど担任に呼び出されてさ。職員室に向かって歩いていると、美術室から"好き"って言う声が聞こえてきて、気になって美術室の窓から中を覗いたんだ」


廊下に聞こえてたんだー…



小さな声で言ってたつもりだったから、ビックリ。


「そしたら、永井がいた。目の前の課題に目も向けず、美術準備室に向かって"好き"って言ってるから、ちょっと変な奴だなって始めは思ったんだけど」


ヤス以外の人に聞かれていたら、大変なことになっていた。



「家に帰ってからも何故か気になって…次の日もいるのかと思って、用もないのに学校に行ってさ。そしたら、また美術室にいて同じように告白してたんだ」




窓の外を見ていたヤスが、こちらを向いた。



「いつも切なそうな、苦しそうな声で。そんな思いをしてまで、好きな相手は誰だろうって…美術準備室に向かって言ってったってことは、沢先生だろうとは思ってたけど結婚しているのは知らなかった」


ヤスが机にある椅子を指さし、¨座っていい?¨と目で言ってきた。


¨うん¨と、頷く。



「だから、苦しいのかとー…叶わない恋だから」


キィッと音を立て、ヤスがベット脇で椅子に座った。



「叶わない恋じゃないか…叶っちゃいけない恋なんだ。だから、ドア越しでしか言えない」

ドクン。


もう過去のことのはずなのに、心臓の音がうるさい。







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