私は貴方に、叶わない恋をした。【続編】
「ほら、ボーっとしてたら遅刻するわよ」
「!」
お母さんに背中を押された。
「ヤスくん、こんな娘だけどよろしくね」
「いえ…では、行ってきます」
ひらひらと手を振り、見送るお母さんの姿。
あんな風に見送ってもらったことなんて、小学生以来だ。
何が何だかわからず、歩き出したヤスの後を追う。
「…ヤス、いつの間にうちのお母さんと仲良くなったの?」
私の記憶では、3日前にヤスがお見舞いに来てくれたのが初めてだ。
「3日前に永井に無理させちゃって、また体調悪くさせちゃったじゃん?次の日に、謝罪しにまた永井の家に行ったんだよ」
ヤスが歩調を合わせ、隣に並んだ。
「知らなかった…」
「永井、寝てたから起こすのも悪いなって思って。で、お母さんがお茶出してくれてさ。リビングで話してたら、仲良くなっちゃった」
仲良くなっちゃったって…
実の娘にも、あんな甘々な態度しないよ。
「話の流れで一人暮らししてるって言ったら、その日の夕飯おすそわけしてくれて、美味しかったよ」
ヤスが満面の笑みで言った。
「自分以外の人が作ってくれた家庭料理って久しぶりだったから、何か感動しちゃった」
ドキ。
あぁ…そっか…ヤスは、両親が離婚してからずっと一人暮らしだもんね。
あの広い部屋で、いつも一人でー…
「かわいそう?」
「!」
ドキ。