Visual My Brother
でも
一番見られなかったのは
お兄ちゃんだった。
涙も見せず、ただ一点に
ビジョンを見つめていた。
立ち尽くし、拳をにぎり、
感情さえ出していない。
たった0.2秒の差にお兄ちゃん
はどんな思いを持ってたん
だろうか。
悲しかったのかな。
悔しかったのかな。
実はすっきりしていたのかな。
今までキラキラを輝いていた
お兄ちゃんがこの時、
とても小汚く、哀れに見えた。
お兄ちゃんはずっと
立ち尽くしていた。
お兄ちゃんが短距離を走るのは
これが最後になった。