純愛小説家
先延ばしにしてはいけない、いられない。
分かってながらも、実行出来ない…。


「いつか。本、出しちゃおっかな」
「本?」
「そっ。矢野 伊月の、知られざる素顔」
「…売れないって」
「売れるよ!!もう、ほんっと自覚ないでしょ。どれだけみんな、知りたがってるか」


俺の素顔。
“時間割”なんか作らなくても、それを見せれば簡単に。
“こと”は楽に、済むのかもしれない…。


「じゃあ。もっと知らなきゃな」
「えっ?」
「旅行に行こう」
「えっ!?」


それは、少し前から。
なんとなく、漠然と考えていたことだった。

俺の全てをさらけ出そうと思ったわけじゃない。


「お盆休み、あるんだろ?」
「あ、うん。それはあるけど…」


こういう事には、よく機転が利く。

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