純愛小説家
グアム。
飛行機に乗った瞬間から、


―失敗したかも…


日本人の多さに、思ったりもしたけど。

よっぽどの偶然でもない限り、俺と三嶋を知ってるヤツなんて、


―いないはず


思うと。


「手、つなぐ?」
「え?」


三嶋の表情を見て、ホッとしたんだろう。
俺もやけに、開放的な気分になって。


「…やなら、いいけど」
「え?ううん!ただ、びっくりして。つなぐ!つなぎます!」


もしかしなくても。
どこか冷めてる…思ってたけど。
ほんとは、そんなに冷めた人間じゃないのかもしれない。


「ほんとに。メモつくろうかな…」
「メモ?」
「うん。宥…矢野 伊月?の、素顔メモ」
「…バカ」
「バカ!?だって、その為の旅行でしょ!」


ただ今まで、そういう相手に巡り逢ってなかっただけで。


「…………」
「あ。なに、その冷めた顔…」


三嶋がその相手なんだと。
気づいてなかっただけで…。

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