純愛小説家
間違ってることに気づいてないんだろう、と、


「どちら様ですか?」


とりあえず答えて。


「部屋番、間違って…」


言いかけた時だった。


『ヒロ?』
「!?」


確かに。
その女は、俺の名前を口にした。


『ヒロでしょ?』


その、声の主。

もちろん。
変装した三嶋じゃなかった。

でも…。


『やっとみつけた…』


その声を。
俺はよく知っていて。


「…………」


ある名前が過りつつ。


─まさか…


俺はそれを打ち消す。

俺が東京を離れたことすら、知らないはずで。

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