純愛小説家
別に。
俺が【矢野 伊月】だとバレるのが、嫌だったからじゃなかった。

三嶋ひかりに逢いたくて、衝動的に戻ってきた地元。

ただカフェに行って。


「久し振り!元気だった?私、たまにここ手伝ってるから、良かったらまた来て?」


じゃあね…。

それだけで、終わらせる気がなかっただけで。

逢うならもっと、違う形で…。

考えていた。

ただ。

じゃあ、


“一体何処で、どんなふうに…?”


それが問題で。

俺は、彼女についての情報を。

時々そのカフェを手伝っている…、ということ以外、何も持っていなかった。

いま何処に住んで。
何をしてるのか。

その時は、まだ……。

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