純愛小説家
そんなことを思いながら。
ただひたすら、キーを打ち続けて、どれくらい経っていたのか…。


─コンコン…


不意に、ノックの音がして。


「宥。休憩したら?」
「…コーヒー…」
「ん。淹れたから飲もう」


ドアが開いたと同時に、その香りが漂ってきて。


「そうだな…。サンキュ。いま行く」
「ん」


俺はそれを保存すると。
パソコンを閉じて、部屋を出た。

コーヒー“だけ”は、やたらうまく淹れる琴音。


「うまい」
「でしょ」


久々に琴音が淹れたコーヒーを飲んで。
あの頃、このコーヒーがやたら好きだったことを思い出す。
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