純愛小説家
「なのに。結婚するって…」
「っ!」


瞬間。
ドキッとした。


「けっ、こん…?」


心臓が。
バクバクしていた。


「さすがに、我慢できなくて…。なのに、毎日毎日デンワしてきて。人の気も知らないで…」
「…毎日?」
「私も辛かったし。困らせてやろうと思って来たのに…」
「……………」


この動揺に気づかれないよう。
琴音の視線が外れたのを見計らって、


─ふぅー…


俺は呼吸を整える。

今は、琴音の話だと…。

そう。
琴音の…。

視線をケータイに向けていた琴音に目をやると、


「ずっと。私だけのことを考えてて欲しかったのに……」


琴音の肩が、小さく震えていて。


「琴音…」


俺は立ち上がって、琴音の隣に移動すると。


「!」


ただ静かに。


「宥…」


その肩を抱き寄せた。
< 195 / 298 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop