純愛小説家
大声で、泣き叫んでいたわけじゃない。


「ふ…っぅ…」


でも。
その、細いカラダを抱きしめながら。


「……………」


全身で、泣き叫んでいるように感じられた。

きっと。
俺も泣きたかったんだろう…。

俺の中にある。
どうにも出来ない感情を、吐き出したくて…。


「大丈夫。琴音ほどいい女はそうそういないから」
「その…。いい女を、振ったくせ、に…」
「…そうだな」
「素直に、認めた…」
「でも…。ほんとに、好きだったよ。白状すると…。結婚を、考えるくらい」
「…えっ…?」
「多分。琴音の人気が出なかったら。結婚、してたろうな」
「…もォ…。今さら、そんな……」
「邪魔に、なりたくなかったから…」
「…宥……──」

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