純愛小説家
俺は、更に涙が止まらなくなった琴音をギュッと抱きしめながら。

琴音には前を向けと促しつつ。
これから悪あがきしようとしてる自分が、滑稽に感じた。

お前も。
観念しろよ…って…。


「自慢、しちゃおっかな…。あの、矢野 伊月、に。結婚を、意識させた女、だって…」
「…河合 宥…」
「相変わらず。そこ、こだわる、んだから…」
「そこ。重要だから。琴音も、だろ?桜井 美莉じゃない。白石 琴音」
「そう、ね…。そう、だけど…」


でも…。
俺は、知ってしまった。


「だから、かな…」
「ん?」
「“琴音”に、戻れるから。宥のところに、来ちゃう、のかな…」
「……ん」


大切なひとと過ごす。
かけがえのない、幸せを…。

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