純愛小説家
「アイツにとって。私、は、あくまで“美莉”だから、ね…。商品…。きっと。この先、も、ずっと…」
「俺にとっては。“琴音”だよ。この先もずっと、な」
「…ん…」


琴音と話しながら。
今の俺なら。
琴音を、支えてやれるんじゃないか、思った。

出会いは。

矢野 伊月として。
桜井 美莉として。

だったけど。

俺はすぐに、河合 宥でいられたし。
琴音も、桜井 美莉じゃなかった。

今ではもう、琴音はトップ女優。
過労報道だって。
過密スケジュールなのは、誰もが想像できること。
疑う奴らもいないはず。
同情こそ集まるものの。

その人気は、揺るぐことはないだろう。

俺という存在も。
【矢野 伊月】として。
邪魔になることもない。

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