純愛小説家
その時。


『もしもし』


受話器の向こう側。
三嶋の声が聴こえてきて…。


「…ひかり?」


わかっていながら。


『ん…。宥…?』


俺は思わず、確認してしまう。


「………ん」


この2週間。
三嶋は何を考え、どう過ごしていたのか…。


「仕事。少し落ち着いたから、逢えないかな…って思って…」


その声を聴いた瞬間。


─逢いたい


俺の気持ちは、逸っていた。


『そっか。お疲れ様』


今までとは違う。
最後になる、分かってはいたけど。


「明日は…?」
『明日?』
「あ…、店の手伝い?」


それでも。
逢って三嶋に、


─触れたい


思った。


『ううん。大丈夫』


いつもと同じ声のトーン。


「じゃあ、待ってる」
『ん。じゃあ、明日』


それでどこか、ホッとしたせいかもしれない。


「明日な…」

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