純愛小説家
あの頃…。


「高校卒業して以来、だよね?」


まさか、こんなふうに逢いたいと思うようになるなんて、まるで想像してなくて。


「河合クン、東京の大学に行っちゃったし」


確かに好きで、目で追ってはいたけど。


「三嶋は、短大、だっけ?」
「うん。地元(ここ)のね」


それは一時的な感情にすぎないと。
ただの通過点のような恋だと思ってた。


「親元から?」
「うん」
「今も…?」
「今?今はさすがに。就職してからは、一人暮らししてる」
「ひとり?」
「うん。この近くでね」


元々、俺はどこか冷めてたし。
恋愛にそれほど、のめり込むタイプじゃなかったから…。

だから。


「この辺?」
「うん。なのに。ずっと気になりつつ、ここ来たの初めてなの」


何の躊躇もなく、俺は地元(ここ)を離れることが出来た。

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