純愛小説家
そして。


「あっ。ママ!」


その顔を見て、途端に笑顔を見せる。
“俺”によく似た、男の子。


「───ひ、ろ……!」


その時。
やはり俺は、泣いていたんだろうか。


「いつき…って。俺の名前…?」


精一杯。
笑顔を見せていたとは思う。


「………宥…」


でも。
三嶋の顔は、ボヤけてよく見えなくて。


「字は?字も、同じ、なのかな…?」
「─────」


間に挟まれたその子が。


「?」


そんな俺と三嶋の顔を、交互に見ているのはわかって。


「ママ?いたたい?」


まだ片言の。


「…いつき…」


言葉を口にしながら…。

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