純愛小説家
俺はもう一度キスをして、三嶋を抱きしめると。


「約束の本…。渡すよ」
「…えっ…?」


耳元で囁いて。


「ここって…」


仕事部屋のドアを開けた。

三嶋の中で、何かが変わろうが。
そんなこと、どうでもいいような気がした。


「矢野 伊月が。こんな奴でごめん…」
「えっ?……えっ!?」


【河合 宥】は俺。
【矢野 伊月】も、俺…。

三嶋は、俺が【矢野 伊月】だと知って近づいて来たわけじゃない。

三嶋に近づいたのは、俺。

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