純愛小説家
「うそ、でしょ?」
「イメージ崩れた?」
「えっ?って…、ほんと、に?」
「未発表の新作は無理だけど。既刊済みの原稿なら見せられる」
「うそ…」


俺の“正体”に、ただ驚く三嶋を、


「うそぉー!」


かわいいな、思いながら。


「残念ながら。…ほんと」


俺は、罪悪感の中にいた。


「河合クンが、矢野 伊月…?」


きっと…、いや…。
三嶋は俺よりも。
その大きな渦の中にいただろう。

この時すでに。

俺は、すべて知っていたから…───。



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