純愛小説家
「なんか。緊張しちゃった」


夕方。


「緊張?」


カフェでの手伝いを終えてきた三嶋が、両手で頬を覆いながらソファーに座る。


「河合クンのこと、気になっちゃって。集中できなかった」
「……………」


ほんと。


「…河合クン?」


どうしていちいち、こうツボを突いてくるのか。


「…コーヒー、飲む?」
「えっ?あ、うん」


っつーか。


俺が、おかしい…?


何気ない仕種や言葉が、妙にかわいく感じて。


「…やべぇな…」
「えっ?なに~?」
「あっ?いや。別に…」


初めての感覚。
とにかくいちいち、三嶋を抱きしめたくなる。


「アイスだけど」
「うん。ありがとう。あっ。ちゃんとミルク入り」


10年分の、少しずつ蓄積されてた気持ちが暴走してるんだろう。

本気で恋愛してこなかったことのツケ、でも…。

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