純愛小説家
ほんと。
本人を前に、

“どんだけ好きなんだよ…”

思わず、小さなため息が出る。


「りょーかい」


軽く、嫉妬を覚えそうだ。



嬉しくない、わけじゃないけど。

微妙。

まさにそんな感じ。

で。


「…どこが。そんなにいい?」
「えっ?」
「俺の小説」


単刀直入に訊いてみた。


「どこ…って、基本的には全部なんだけど…」


三嶋は、夕食を手際よく作りながら。
その手を止めずに答える。


「ストーリーはもちろん、登場人物とか」


しかも。
その表情がまた、かなりいい感じで。


「…ふぅーん」


やっぱり。
俺は“微妙”なまま。

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