純愛小説家
そうじゃなくても。
俺はずるい男なのに…。

俺がなんの感情もなく、記憶にすら残ってない相手を抱いていたこと。

かなり過剰に、小説家としての俺。
【矢野 伊月】に、反応してしまってること…。

三嶋には、知られたくない、思った。

ただ、いずれ。
俺のずるさを、三嶋は知ることになるだろうけど…。


「って、ねー。聞いてる?」
「…えっ?」


ひとり。
俺が思いを巡らせてる間も、三嶋は語っていたんだろう。


「あ、うん…」
「ほんとー?」


何となく、きれいなストーリー、言ってたような気がして。


「きれいなストーリー、だろ?」


とりあえず。
口にしてみる。

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