閃光は空を駆けて
「……停電、みたいだね」


左斜め前から、テノール。


初めて聞いた、彼の声。


耳障りのいい、上質な布みたいな声だと思った。


「そう、みたいね」


戸惑いながらも、反射的に言葉を返してた。


図書館の職員のひとから、復旧までに時間がかかると説明があって、ため息をつく。


停電だから、当然クーラーも止まっていて。


だんだん蒸し暑くなる。


窓からは時折、青白い稲光。


数秒あいて、とどろく雷鳴。


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