閃光は空を駆けて
あれから、あたしはずっとひとりでいたわけじゃない。


恋もしたし、恋人もいたことがある。


だけど、雷の鳴る日は決まって彼を思い出す。


雷鳴のなか、交わした数個の言葉。


なめらかな声と、青白い光の中で見た顔。


蒸し暑い空気、図書館の匂い。


自分でも驚くほどはっきりと思い出せる。


「まるで、あの日の再現ね」


ひとり、小さくつぶやいたあたしは、今日も図書館に来ていた。


いつもの席で、大学のゼミ発表のレジュメを製作中。


今朝から振り出した雨は徐々に強まり、図書館の喫茶店で昼食を取り終わる頃には豪雨になっていた。


遠くでごろごろと雷の音がして、真っ黒な雲で空が覆われた。

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