『猫型男子の恋模様』

その声がよく聞き取れなくて首を傾げた。

いま、滝沢くん、なんて言ったのかな・・・?

なんか言った気がしたけど、余所見をしている余裕なんて、今の私にはなくて、聞き返すことはしなかった。


「相原さんも来るんでしょ、ウチ」

「え、あ・・・う、うん。行きたい、たまくんの家!!」


そういうと、ふわりとたまくんの香水の香りが鼻先を掠めた。

たまくんみたいに甘い、そんな香りだった。


* * *


私たちは、金曜日の放課後、たまくんの家に来ていた。

たまくんの部屋は、モノトーンにまとめられていて、キレイに片付けられている。


「疲れたね・・・」


気づけば、たまくんの家に来てから、三時間が過ぎている。


「じゃあ、休憩しようか」

「うんっ」


そう言ってたまくんは立ち上がってキッチンへ立つ。

たまくんは溜まっていた食器を洗っているようだ。

シャ──ッと水の音が聞こえてくる。


「今日さ、希々ちゃんと祐ちゃんは朝まで平気?」

「へ・・・?」


王子の言葉に私は目を丸くしたけど、

祐ちゃんはきっぱりと「このあと彼氏と会うから無理」と断った。

そうすれば、王子の視線は私に向けられる。

え・・・私は平気だけど。
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