好き、の二文字が聞きたくて。

(これだから先輩は後輩にも同級生にも人気があるんだろうなー…)

なんてうつつを抜かしているとまたも先輩がすぐ目の前に迫っていた。

「わっ!!!」

突然の先輩のドアップに派手に驚いてしまった。

「今、誰のこと考えてた?」

露骨に驚いた私を前に先輩は意地悪そうに言った。

「べ、別に先輩の事なんて考えてません!」

反射的にそう答えた私に先輩がまたニヤリと笑う。

「あれー?俺自分のことだなんて言ってないけどなー?」

「あ。」

(墓穴を掘ってしまった…)

「せ、先輩こそ!なんでいつも私に絡んでくるんですか!」

咄嗟に出た言葉に「まずい」と思ったが遅かった。

その瞬間、先輩が今までに見たことないぐらい酷く傷ついた顔をし、言った。

「…なんでだと思う?」

(え…)

思いもよらぬ先輩の雰囲気と発言に私は固まってしまう。

「あの…先輩?」

私がそう言うと何事も無かったかのようにまたいつもの先輩に戻った。

「…なんてね!なんでもないよ!気にしないで!っと、そろそろチャイム鳴っちゃうね。んじゃばーい瑠璃たん!」

そう言い残し先輩は3階の教室の方へ行ってしまった。

「あ、はい…」

(さっきのって一体どういう意味だったんだろう…)

小さなわだかまりが残ったまま、私も教室へ向かった。
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