どうしようもないほど、悪人で

(二)

「は?離れる理由ぅ?んなもん、お前といるとやりたくなるからに決まってんだろう」

とのことで、好きな人のもとから離れていく殊勝な男。また二、三日帰らないな。眠ろうと怠惰な時間を過ごしていれば。

「星、見に行くぞ」

有言不実行。その日の夜に帰ってきた。
しかもか、やけに楽しげなご様子。

寝たふりをしてもすぐに露見。男にかつがれて、久々に外に出た。

ずっと暖かな布団の中にいたもので、外の空気はやけに肌寒く思えた。はあと息を吹いても白くはならないというのに、ぬくぬくとした生活に慣れすぎてしまったらしい。

「どうして、星なのですか?」

「流れ星ってのを見つけて、三回願いを言うと叶うらしいぞ!」

「寝たい、寝たい、寝たい」

「起きろ、起きろ、起きろ。たまには、こんなのもいいだろ?逢い引きってやつ」

よいせ、と小高い丘の上で下ろされた。
見晴らしのいい場所を昼間の内に見つけたのだろう。辺りは何もなく、獣さえもいない静かな場所だった。

空を見上げる。確かに星は出ているが。

「六割方、暗雲立ち込める空ですね」

「死んだ奴は星になるっつーから、今朝からずっと殺しまくったんだけど。雲がなくなれば、一面の星空だぞ。きっと」

「星を見に行こうとか、死んだら星にとか。そんなにメルヘンチックな方だと思いませんでした」

「ロマンスものが、巷の女たちに流行ってるみてえだからな。お前も読んでおけよ。本、持ってきてやるから」

ごろんと横になる男。私の膝に頭を乗せて。

「かてー、枕。もっと食って、ぶよぶよなれや」

「以前よりも肉はつきましたよ」

デコピンをされてしまった。

うそつけ、と馬鹿にするように笑っていたのに、ふと、顔が曇る。この空よりも暗く。

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