ジャスティス
門を出た男はイライラしながら善二への暴言を吐いていた。

女は窓の外を眺めながら男の口からでる暴言を黙って聞いている。



「あいつらぜってぇ許さねえ!!」



鼻息を荒くし運転にイライラをぶつけるように前を走る車を煽りクラクションを鳴らす男。





友達を集めて、あいつらみんなぶっ殺す。

付いていない傷をつけて車を弁償させてやる。



「車を弁償させたら家に火を着けてやる!逃げれないように家の回りにガソリン撒いてあいつらみんな焼き殺してやる!!」



次から次へと出る暴言に女は小さく溜め息を吐いた。



「ねぇ、もういい加減やめなよー」



うんざりしたように言った女に男は顔を向けると車を停めた。



「あぁ!?テメェふざけんなよ!!」



怒りの矛先は女に向かい、男は女を睨んだ。



「お前さ、あの下僕のことが気に入ったんだろ?」



男の言う下僕とは善二の事だった。



「はぁ?違うし!」



「お前、あいつのことずげぇ見てただろ!だいたいテメェは強い男が好きだもんな?俺がお前の男、ボコボコにしたら強い人が好きっとか言って簡単に寝返ったもんな!次はあの下僕野郎か?あぁ?」



「もーいい!」



女は男から離れたくなり車から降りようとした。

すでに男への気持ちは薄れかけていた。

目の前で呆気なく倒され、それでも尚、強がって吠える姿があまりにもカッコ悪く思えてしまったのだ。

善二のことが気になったわけではない。

だが、強く、それでいて整った顔をした男が目の前にいた。

今、目の前にいる男と善二を比べれば、なぜこんなみっともないない男なんかと…

そう思わずにはいられなかった。



男は車から降りようとドアノブに手を掛けようとした女の髪を引っ張った。



「いたっ!ちょ、やめてよ!」



「うるせぇ!!」



男は拳を振り上げて女を殴ったのだ。

蹲り、腕で頭を守ろうと必死で抵抗するが男は平手で何度も頭を叩き髪を引っ張り顔を上げさせた。

涙で濡れた目元は化粧が黒く滲み、ぐちゃぐちゃになっていた。

もう止めて、と懇願する女に対し、男は今までのイライラをぶつけるように女を煽った。

そして力強く女の頭を拳で打ったのだ。

ハァハァと息を荒くし、掴んだ髪を離すと女は助手席に蹲ったまま動かなかった。

男は指に絡んだ数本の髪を払おうと手を払った。





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