ジャスティス
男は自分自身の体に起こった光景に絶句した。

固定されていて抜け出せなかった右手は、まるでラズベリーパイを素手で握り潰したように真っ赤だった。

指先の肉は潰れ、骨が剥き出しになっている。

皮膚に繋がり、ぷらぷらと揺れる肉片。

右の全ての指の先端が、潰れていたのだ。

口を大きく開けて、叫んだ男は自分の手を見て更に嘔吐した。

込み上げる胃液は口だけではなく鼻からも流れ、ツンとした痛みに反射的に涙が溢れた。



「あっあぁあぅ……うぅっ…」



すでに唸るしかできず顔を歪めて泣く男に、車から降りた善二が近付いた。

迫りくる善二に怯えながら車の中で更に泣きじゃくる男だったが、善二は構うこともなく近付き、運転席の窓の横に立った。

手に握られたバールのようなものを振り上げると勢いよく窓に叩きつけた。

瞬間、運転席の窓はいとも簡単に砕けた。



「くるなっ、あっちにいけっ!!」



男は泣き叫んだが、割れた窓を叩き落とした善二はバールのようなものを足元に落とすと、拳を男の顔面に一発、打ち込んだ。

驚いた表情をしたのも束の間、男は鼻血を流し運転席にもたれて痙攣しながら気を失った。







「由良ちゃん、終わったよ」



「お疲れ様。今のうちに地下に運んじゃおうか」



無線で由良に連絡を入れると次の場所へ運ぶように言われた善二は車のドアを開けると、男を固定していたシートベルトをカッターで切ると襟首を掴んで引きずり下ろした。

ロープで手首と足首を縛っている間、善一の運転する車がすぐに到着し、ビニールの敷かれた後部座席へと男を押し込んだ。



「あとはよろしく。俺は車の処理してから行くから」



善二は運転席の善一にそう言うと男を包むようにビニールをかけた。


ドアが閉まるのを確認すると善一は助手席に由良を乗せて車を走らせた。

サーキット場から出た車は来た道を戻り、由良の住む屋敷へと向かった。






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