ジャスティス
玄関の近くまで進むとカチッと音が聞こえ、扉が開いた。
開いた扉の奥からもう一人の使用人が出てきて扉を開いたまま支えている。
「お帰りなさい」
使用人は頭を下げながら由良を出迎える。
由良は、ありがとうと微笑み、玄関に入っていった。
真子はまだ頭の上がりきっていない使用人に軽く会釈をしながら由良の後を追った。
靴を脱ぎながら屋敷の中を見渡すと外の壁と同じように真っ白な壁で統一されていた。
金持ちの家には壺や絵画がいっぱい並んでいるという予想は外れ、玄関や二階に続く階段、左右に広がる廊下には何一つの装飾もなかった。
頻繁に来客があるのか、玄関には白いスリッパが数個、すぐに履けるように置いてあった。
由良はそれとは別に置いてあった茶色いスリッパに履き替えて白いスリッパを真子に履くように促した。
「失礼します」
そう呟いて、先を歩く由良の後を付いていく。
玄関を上がったところを右に向かうとすぐに両サイドにドアがあった。
二つ目の右側のドアを開けると、そこはキッチンだった。
大きなテーブルに高そうな椅子。
キッチンにはガスコンロが四つあり、数種類の鍋やフライパン、調理器具などが綺麗に並べられていた。
由良はテーブルにケーキの入った箱を置くとシンクで手を洗い、食器棚からお皿を取りだして箱を開けた。
箱の中には美味しそうなケーキがたくさん入っていた。
見るからに少し高そうなデザインのケーキだ。
「綾瀬さんはどんなケーキが好きなの?」
「私は何でも好きです」
「それじゃあ、適当に選ばせてもらうね」
由良はお皿にケーキを数個を移し、箱を閉じると真子に箱を渡した。
「はい」
「え、でも!」
箱の中には出したよりも多い数のケーキが残っていた。
パッと見ただけだったがそれでも5個はあるだろうか。
真子は、そんなに貰えないと首を振ったが由良は、いいからと箱を押し返して真子に手渡した。
「本当にいいんですか?」
「えぇ、ぜひ」
真子は申し訳なさそうに箱を受け取った。
その時、ボーンと大きな音が聞こえ、真子はビクリと肩を竦めた。
「ごめんなさい、父の時計の音なの」
繰り返し鳴る低い音。
真子はなぜかおじいさんの古時計の歌を思い出した。
それと同時に慌ててスマホを見ると三時を回っていた。
「あっ、もう行かなきゃ!」
慌てたもののケーキだけを貰って早々に帰るのも悪い気がしたが由良はそれを察したように微笑んだ。
「また時間のあるときにでも、ゆっくりお話しできたらいいですね」
「はい、ぜひ!」
真子も同じように微笑み返し、頭を下げると部屋を出た。
玄関に向かうと使用人が立っており、真子が靴を履くと扉を開けてくれた。
真子は来たときよりも深く頭を下げると門に向かって歩いていった。
庭を早歩きで進む真子の姿を由良は窓から見つめていた。
門が開き、真子が出ると全てを拒絶するように再び閉められた門。
由良は真子が出ていくのを確認するとティーポットにお湯を注いだ。
ユラユラと沸き上がるハーブの香りに、ふぅっと息を漏らした。
開いた扉の奥からもう一人の使用人が出てきて扉を開いたまま支えている。
「お帰りなさい」
使用人は頭を下げながら由良を出迎える。
由良は、ありがとうと微笑み、玄関に入っていった。
真子はまだ頭の上がりきっていない使用人に軽く会釈をしながら由良の後を追った。
靴を脱ぎながら屋敷の中を見渡すと外の壁と同じように真っ白な壁で統一されていた。
金持ちの家には壺や絵画がいっぱい並んでいるという予想は外れ、玄関や二階に続く階段、左右に広がる廊下には何一つの装飾もなかった。
頻繁に来客があるのか、玄関には白いスリッパが数個、すぐに履けるように置いてあった。
由良はそれとは別に置いてあった茶色いスリッパに履き替えて白いスリッパを真子に履くように促した。
「失礼します」
そう呟いて、先を歩く由良の後を付いていく。
玄関を上がったところを右に向かうとすぐに両サイドにドアがあった。
二つ目の右側のドアを開けると、そこはキッチンだった。
大きなテーブルに高そうな椅子。
キッチンにはガスコンロが四つあり、数種類の鍋やフライパン、調理器具などが綺麗に並べられていた。
由良はテーブルにケーキの入った箱を置くとシンクで手を洗い、食器棚からお皿を取りだして箱を開けた。
箱の中には美味しそうなケーキがたくさん入っていた。
見るからに少し高そうなデザインのケーキだ。
「綾瀬さんはどんなケーキが好きなの?」
「私は何でも好きです」
「それじゃあ、適当に選ばせてもらうね」
由良はお皿にケーキを数個を移し、箱を閉じると真子に箱を渡した。
「はい」
「え、でも!」
箱の中には出したよりも多い数のケーキが残っていた。
パッと見ただけだったがそれでも5個はあるだろうか。
真子は、そんなに貰えないと首を振ったが由良は、いいからと箱を押し返して真子に手渡した。
「本当にいいんですか?」
「えぇ、ぜひ」
真子は申し訳なさそうに箱を受け取った。
その時、ボーンと大きな音が聞こえ、真子はビクリと肩を竦めた。
「ごめんなさい、父の時計の音なの」
繰り返し鳴る低い音。
真子はなぜかおじいさんの古時計の歌を思い出した。
それと同時に慌ててスマホを見ると三時を回っていた。
「あっ、もう行かなきゃ!」
慌てたもののケーキだけを貰って早々に帰るのも悪い気がしたが由良はそれを察したように微笑んだ。
「また時間のあるときにでも、ゆっくりお話しできたらいいですね」
「はい、ぜひ!」
真子も同じように微笑み返し、頭を下げると部屋を出た。
玄関に向かうと使用人が立っており、真子が靴を履くと扉を開けてくれた。
真子は来たときよりも深く頭を下げると門に向かって歩いていった。
庭を早歩きで進む真子の姿を由良は窓から見つめていた。
門が開き、真子が出ると全てを拒絶するように再び閉められた門。
由良は真子が出ていくのを確認するとティーポットにお湯を注いだ。
ユラユラと沸き上がるハーブの香りに、ふぅっと息を漏らした。