ジャスティス
「由良様、どうしますか?」



「まだ停まっているようなら車を倉庫に運ぼう」



「分かりました」



善一はポケットから電話を取りだして電話をかけた。







「何があるか分からないので、由良様はこちらで待機していてくださいね。車は私と善二が運びますので」



通話を終えた善一がそう言うと由良は少しだけ不満そうな顔をした。



「私も一緒にいく」



「いけません」



基本的に主である克明やその娘の言うことに反対や逆らうようなことはなく、寧ろ善一は由良には一際甘いところがあったが、ダメなときは断固としてそれを覆すことはなかった。

最初はダメだと言っても、その後で考えたり少し笑うような場合、結局は由良の要求を呑むが、今のようにスパッと返事が返ってくるときは絶対に首を縦には振らないのだ。

少しだけ不満そうな顔をして唇を尖らせる由良に善一はクスッと笑い、頭を手のひらでポンポンと撫でた。



「すぐに帰りますから」



「だけど……」



「20分以内に帰りますから」



「うーん。分かった」



「できるだけ早く帰るように頑張りますから」



そう言って善一は玄関から出ていった。

そのすぐ後、玄関から入って右側の廊下、一番最初の右側のドアからもう一人の使用人が出てきた。



「由良ちゃん大丈夫だった?」



善一とよく似た顔。

双子の弟、善二が出てきたのだ。



「大丈夫、ぜんちゃんもいたから」



「でもさ、頭に来るよね。もし一緒にいたのが俺だったら、そいつ速攻で殺してるけどな」



あまりにも似すぎた顔とは違う、正反対の性格。

善一は由良に対して敬語だが善二は友達のように話しかけた。



「とりあえず善一と行ってくるから、由良ちゃんは待っててね」



「うん。ぜんくんがやらなくても、もうすぐ死んじゃうけどね」



クスッと笑いながら、由良は似合わない言葉を呟いた。


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