素直になれない雨と猫
1.だいきらいな雨
降りだした雨の中、わたしは空を見上げていた。

シーメルトの、水彩画のような空はいつも綺麗だ。

雨が降っても透き通るようなスカイブルーは顕在している。

唇を濡らす一滴を舐めてみると、懐かしい味がした。



シーメルトは今、初夏を迎えている。

海を挟んだ日本でも、同じように梅雨が訪れているようだ。

日本では、じめじめとしたこの時期の雨は大抵嫌われているらしいけれど、シーメルトの雨は見た目も味も、どれをとっても美しい。

この雨は、シーメルトの女神・メルティリア様が流した涙といわれていて、この海上都市に住む民はみんなこの雨が好きなのだ。



わたしを除いて。

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