素直になれない雨と猫
マーケットでのわたしの目当てはお菓子。

それもただのお菓子ではない。

ルノールの限定クッキーだ。



ルノールはわたしのお気に入りの洋菓子店で、月に一度のマーケットにも出店している。

特に、マーケット限定で販売されるチョコとバニラのマーブル模様のクッキーがわたしの好物だった。

丸くてかわいいし、味もおいしい。



「あ、ユメちゃん!」



ルノールのワゴンをみつけたとほぼ同時に、わたしの名前を呼ぶかわいらしい声が聞こえた。

薄い水色のエプロンをつけた小さな女の子だ。



「ユキちゃん」



わたしが名前を呼ぶと、彼女はにっこり笑って大きく手を振った。
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