素直になれない雨と猫
三度目に出会ったとき、私は息を止めた。
「こんにちは」
いつもそうだ。
同じトーンで同じ言葉を口にする。
無視してもよかったのに。だってわたしは散歩していただけなのだから。
クッキーの彼は洋菓子店ルノールの近くで、数匹の野良猫に餌をやっているところだった。
わたしをみつけた彼はなんだかとてもうれしそうだ。
「だれですか」
十分用心しながらあくまで冷たく返す。
立ち止まらないように足を前に進めてはいたが、抜き足差し足といった感じで、逆に怪しい動きになってしまった。
「え? クッキーは受け取ったのに、僕のことは忘れたの?」
ひどいなあ。と、つぶやいたわりには、全然残念そうじゃなかった。
むしろ楽しそうだ。
彼の持っている餌に向かって、野良猫が手を伸ばしている。
早くくれ、とでもいっているみたい。
「こんにちは」
いつもそうだ。
同じトーンで同じ言葉を口にする。
無視してもよかったのに。だってわたしは散歩していただけなのだから。
クッキーの彼は洋菓子店ルノールの近くで、数匹の野良猫に餌をやっているところだった。
わたしをみつけた彼はなんだかとてもうれしそうだ。
「だれですか」
十分用心しながらあくまで冷たく返す。
立ち止まらないように足を前に進めてはいたが、抜き足差し足といった感じで、逆に怪しい動きになってしまった。
「え? クッキーは受け取ったのに、僕のことは忘れたの?」
ひどいなあ。と、つぶやいたわりには、全然残念そうじゃなかった。
むしろ楽しそうだ。
彼の持っている餌に向かって、野良猫が手を伸ばしている。
早くくれ、とでもいっているみたい。