素直になれない雨と猫
「よく会うね。やっぱりこの辺に住んでるんだ?」
「住んでません」
「え、じゃあ野宿?」
「屋根はある」
「じゃあ住んでるんだよ。そこが君のお家でしょう」
屋根があるかどうかが基準になるのだろうか。
疑問に思ったが、もっと不思議なのは彼と普通に会話していることだった。
できればこれ以上関わりたくないのに。
「僕はね、憂(ゆう)っていうの。僕もこのあたりに住んでるんだよ」
「聞いてません」
「この子たちに話してるの。ねー、にゃんこ」
彼が野良猫たちに話しかけると、彼らは一斉に「にゃー」と鳴いた。
よく訓練されている。餌に騙されたんだな、と一人納得した。