俺様副社長のターゲット
「松井さん、警戒してる?」



私の気持ちを読み取ったような言葉に黙りこんだ。



「だって松井さんと副社長、仲が良い感じがしたから。」


「特に。秘書と副社長ですが。」


「そうなの?」


「はい。」



その社員はそれでもニヤニヤとしている。私は彼から視線を逸らした。



「あっ、俺、佐伯陽輝(さえき はるき)。」


「佐伯?」


「そっ、佐伯陽輝。兄貴は尚輝。」



その言葉に固まった。


『兄貴?』



私は女子社員に囲まれている尚輝を見た。



「あれ?弟がいるの知らなかった?秘書なのに。」



視線を陽輝に戻した。ニヤニヤしている理由がわかった。



「すみません、勉強不足で。」


「俺、朱里さんの二つ下。高校も同じって知ってた?」


「…………ごめんなさい、知らなかった。」



周りの社員がじっと話を聞いている。私は盛大な溜め息を吐いた。
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