俺様副社長のターゲット
「佐伯は選り取りだろ。俺に譲れ。」



佐藤さんの明るい声に、私と陽輝の間にあった微妙な空気が消えた。



「ははっ、佐藤さんならOKかも。」


「はっ?意味がわからない。」


「だって朱里さんは俺みたいにモテる奴は相手にしないから。」



静まり返る空気に私に視線が集まる。



「朱里さんはモテる奴は相手にしない。そういう女でしたから。」


「…………。」


「ねっ?朱里さん。」



集まる視線に席を立ち上がり、にっこりと微笑んだ。



「すみません、お手洗いに。」



私はその場を後にした。真っ直ぐにお手洗いに向かう。


用を済まして、また席に戻ろうとしたが――――。



「朱里。」



扉を出た所に立つ煌太に目を見開いた。



「煌太?」


「朱里、男と飲んでるのか?」



驚きに体が動かなかった。



「そんなに驚くなよ。店は朱里に聞いただろ?」


「そうだけど。何で来てるの?」



煌太の行動に恐怖を感じる。飲み会の店にまで来るなんて。
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