俺様副社長のターゲット
「煌太、戻らないと。」



煌太の手が離れた。私は掴まれていた部分を擦った。



「朱里さん、こんな男は止めれば?」


「はあ?ただの後輩には関係ない。」


「まあ、そうだね。朱里さん、皆が待ってるから戻るよ。」


「うん。煌太、またね?」



煌太に背を向けて陽輝と並んで歩く。背中に突き刺さる煌太の視線が痛い。



「朱里さん、ヤバくない?あの男。」


「………大丈夫だよ。優しい人だから。」


「優しい奴程、怖くなる事もあるよ。」


「…………。」


「逃がしたくない想いが狂気に変わる事を覚えておいて。」



陽輝の言葉に背中がゾクリとした。



『狂気に変わる?』



『煌太は大丈夫だよね?』



私は陽輝の隣に腰掛けた。目の前にあるグラスをじっと見つめた。



「松井さん、大丈夫?飲みすぎた?」



佐藤さんの心配そうな声に顔を上げた。



「いえ、大丈夫です。」



私はにっこりと微笑んで皆と飲み始めた。
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