俺様副社長のターゲット
「はい、副社長。」


「松井、明日の海外事業部との打ち合わせの資料を頼む。」


「えっと……まだ届いてませんが。」


「悪いが取りに行って、部屋に持ってきてくれ。」


「はい、分かりました。」


「陽輝の奴………。」


「あっ、陽輝くんの資料ですか?今日は打ち合わせに出掛けると聞いたのですが。一応、連絡してみます。」



受話器を置こうとしたら、副社長の不機嫌な声が聞こえてきた。



「また陽輝と一緒に来たのか?」


「えっ?あっ、はい。」


「仲が良すぎだろ。」


「…………聞いてみます。後でお持ちします。」



私は強引に受話器を下ろした。陽輝との噂が流れた時にも副社長は不機嫌だった。


副社長の気持ちが分かっている分、陽輝との話題には触れないようにしている。



『兄貴、本気だから。』



ふと陽輝の言葉を思い出した。陽輝はこんなに兄貴思いなのに、なぜ副社長は理解していないのか。
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