俺様副社長のターゲット
私は席を立ち、海外事業部に向かった。陽輝はまだ席にいるようだ。


陽輝に近付いて声を掛けた。



「佐伯くん、明日の資料なんだけど出来てる?」


「あっ、悪い。まだなんだ。午後、出掛ける迄には作成する。午後でも間に合う?」


「午後か………。わかった、副社長に確認してみる。午後は副社長も私も出掛けるから。」


「マジか………。兄貴、怒るだろうな。」


「ははっ。朝一でも大丈夫か聞いてみる。もしかして早めに帰社するかもしれないし。」



陽輝に軽く手を振り、私は海外事業部を出て副社長室を目指した。


案の定、副社長は愚痴を溢している。



「陽輝はちゃんと仕事をしてるのか?」


「してるよ。まだ二年目なんだし、私は頑張ってると思うよ。」


「また陽輝の肩を持つのか?」


「…………違います。私は見たままを伝えてるだけです。副社長も少し陽輝くんに厳しすぎますよ。」



私は副社長にお辞儀をして背を向けた。
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