俺様副社長のターゲット
店の中はOLやサラリーマンで溢れていた。私達は空いた座敷に通された。



「ちょっと、佐伯商事の副社長じゃない?」



「本当だ。秘書の方々と?華やかね?」



「どんだけ有名人なのよ。」



私の一人言が小さく呟かれた。



「松井さん、副社長は有名よ?だって御曹司だもの。皆、隙あればって感じでしょ?」



「そうそう。社内では狙う人は少ないけどね。だって副社長、社内恋愛はしないらしいから。」



「社内恋愛はしない?」



「でしょ?副社長。いつも断る理由はそれでしょ?」



私の隣に座った私より一つ下の伊藤真央(いとう まお)が尚輝に向かって話した。



目の前に座った尚輝に視線を向ければ、私をじっと見ていた。



「社内恋愛はしないって。女子社員の噂ですよ。」



「ああ。」


「やっぱり。だから社内の女子は半分諦めてるの。」




伊藤さんはにっこりと微笑んで私を見た。その黒い笑みに顔が引きつる。
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