俺様副社長のターゲット
「ここ………。」



「朱里、覚えてるか?」



二階建ての体育館。その一階は小さな先生達の部屋と武道場があるだけで、開けている場所がある。



そこで私と尚輝は良く話したりしていた。そして………。



「朱里に別れを言われた場所だ。」



そうだ。ここは楽しい思い出、辛い思い出が詰まった場所だ。



私に背を向けて立つ尚輝は何を考えてる?



「朱里、もう一度、俺と始めてくれ。この場所から………。」



「尚輝先輩?」



「俺達が終わったこの場所から………もう一度、俺と始めてくれないか?」



背を向けていた尚輝が私の方に体を向けた。真っ直ぐに私を見つめる尚輝を見つめ返す。



「朱里、もう一度、始めてくれないか?」



「無理だよ…………。」



私は首を横に振った。私には煌太がいるし、尚輝ともう一度なんて勇気もない。



「ごめん、無理だよ。」



「………。」



沈黙が静かに流れた。
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