俺様副社長のターゲット
その視線に体が強張るが、突然、視線が遮られた。



「朱里、乗れ。」



見上げれば、目の前には尚輝が立っていた。社員からの視線を隠すように尚輝が立っていた。



「早くしろ、朱里。」


「うん。」



私は社長の隣に乗れば、尚輝もその後に乗ってきた。



「私は前に……。」


「いいから。渡辺さん、宜しく。」



車の扉が閉まり、走り出した車に軽く背凭れに凭れた。隣に座る社長の視線が気になり、私は社長に視線を向けた。



「社長?」


「尚輝が君を秘書にしたいと言った時に理由を聞いた。社内ではなく、社外の子会社から秘書を選ぶからね。」


「………理由………。」


「君を取り戻したい。昔、泣かせた女を取り戻したいと言っていたよ。」


「………。」



社長の言葉に何も言い返す言葉が見つからない。じっと私を見つめる社長を見つめ返した。
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