俺様副社長のターゲット
社長の切ない声が私の耳に残る。きっと社長も同じ思いを奥様にさせたのかもしれない。



「尚輝は本当に頑張っていたよ。大学に通いながら会社の事も学んだ。」


「そうですか。」


「こんなに若くして副社長に推薦したのも尚輝の頑張りが会社の利益に繋がっていたからだ。そして副社長になってすぐに秘書を迎えたいと言い出した。」



私は隣に座る尚輝をチラリと見れば、じっと私を見下ろしていた。



「私は君がどんな人間だとか、どんな優秀な秘書なのかも分からなかった。だけど尚輝の揺るぎない想いを聞いて折れたんだ。」


「私はどんな人間に見えますか?」


「まだ分からないが、尚輝が君に執着しているのは伝わってきている。」


「執着………、尚輝先輩は気にしているだけですよ。私を不幸にしたんじゃないかって。でも、私は不幸じゃないですから。」


「気にしてるだけじゃない。俺は朱里を忘れられなっただけだ。」


「だからです。忘れられなかったのは罪悪感があったから。別に私を好きな訳じゃない。」


「好きな訳じゃない?俺は朱里を………。」


「罪悪感から来る勘違いです。尚輝先輩はきっと私を傷つけた罪悪感で勘違いしてるんです。」



尚輝を見上げた。



「罪悪感と好きを勘違いしてるんです。」



じっと尚輝を見上げて言い切った。
< 62 / 229 >

この作品をシェア

pagetop