俺様副社長のターゲット
私は目の前にあるワインをゴクリと飲んだ。



「兎に角、尚輝先輩とは昔の話です。今は副社長と秘書。それだけの関係ですから。」


「副社長でもフラれるんですね。」



空気を読まない伊藤さんの声に副社長の雰囲気が冷たくなる。伊藤さんが苦笑いで私を見た。



「よっぽど好きなんですかね?松井さんのこと。」


「違うわよ。ただ副社長はモテるから拒絶された事がないの。だから私に拘ってるだけよ。」


「そうですか?副社長は松井さんにベタ惚れだと思いますけどね。」


「ない。昔っから副社長は女癖が悪いから。人ってそう簡単に変わらないよ。」



私はワインを一口飲んだ。



『人ってそう簡単に変わらない。』



『尚輝先輩も変わってない。彼女がいても他の女と遊ぶに違いない。』



「副社長は一途に愛してはくれない。」


「えっ?」



前に座る伊藤さんが私を見た。私は苦笑いで答えた。
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